2023.09.04
三ツ川ミツイラストメイキング1 | 下準備① 全体の工程とカラーラフ
イラストレーターの三ツ川ミツ(みつかわみつ)です。
今回のイラストはキャラに発光レイヤーを使い、エフェクトを散りばめてキラキラした楽しそうな雰囲気を目指しました。
暗い背景の中に光が輝いていると、綺麗な印象を作ることができます。
この記事では私のイラストの描き方を順番にご説明していきます。
何か一つでも、イラストをもう一段階クオリティアップするためのヒントになりましたら幸いです。
メディバンペイントを使って、光輝くイラストのポイントをお伝えしていきます!
この先は「下準備」と「本作業」に分けて、以下の構成でお送りいたします。
下準備① 全体の工程とカラーラフ
下準備② ライティングを決める
下準備③ 全体の雰囲気を決める
本作業① 下描き/線画/下塗り
本作業② 着色①
本作業③ 着色②
本作業④ ブラッシュアップ
この中で一番重要なのは最後の「本作業④ ブラッシュアップ」です。
途中の工程は私のイラストの描き方の具体的なご説明なので、かなり細かい内容になります。
人によって描き方は違うため、制作スタイルによっては使うことができない内容もございます。
ですが、最後のブラッシュアップの工程はどの方でもお役に立つことがひとつはあるのではないかと思いますので、よろしければまずそちらをご覧ください。
Index
下準備①全体の工程とカラーラフ
最初はまず完成までの流れをざっくりとご覧いただき、そのあと実際にカラーラフの下地までを作っていきます。
- 全体の工程
描き始めから完成までのおおまかな流れです。
大きな段階が4つあります。
工程1.アイデアを出して、カラーラフを作る。
工程2.ラフを元に清書する。(線画、色塗り)
工程3.全体が整ったら、調整を何度も繰り返す。
工程4.細部の粗さを整えて完成です。
特に大事な工程は「1.カラーラフを作る」と「3.調整を繰り返す」で、ここで何度も見直して考えます。
カラーラフで完成形のイメージをしっかり固めておくと、清書の線画・塗りでの迷いが減り、作業にのみ専念することができます。作業時間の短縮にも繋がります。
そしてラフ通りに描く作業をしたあとには、見映えをよく考えて調整を繰り返します。調整にじっくり取り組むことでクオリティを少しでも上げます。
その後は、はみ出したり線が途切れている細部を綺麗に整えて完成です。
工程1. 考える ―カラーラフ
↓
工程2. ひたすら作業 ―線画、色塗り
↓
工程3. もう一度考える ―調整
↓
工程4. ひたすら作業 ―細部を整える
というように、考えるターンと作業のターンに分けています。
考えながら描くことと丁寧に描くことを並行してしまうと、途中で完成イメージを見失ってしまったり修正に時間がかかったりするため、それぞれ分けています。
【工程1】カラーラフを作る
ここからはカラーラフを実際に作ります。
カラーラフの工程を6つに分けて流れを追っていきます。
カラーラフ1. アイデア出し
カラーラフ2. 構図を決める
カラーラフ3. アタリを描く
カラーラフ4. ラフの下地を描く
カラーラフ5. ライティングを決める
カラーラフ6. 全体の雰囲気を決める
カラーラフ1.アイデア出し
どんなイラストが求められているか、その中でどんなイラストが描きたいかを考えます。
まず、思いついたことをできるだけ多くメモしています。漠然とした単語をキーボードで打ち込む時もありますし、紙のノートに大きくマインドマップ状に書いていく時もあります。
ぱっと良いアイデアが浮かぶ時もありますし、なかなかピンとくるアイデアが出ない時もあります。
私の場合、ここで見切り発車にしてしまうと着地点が見つからずぼやけた印象のイラストになってしまうので、腑に落ちるまで考えるようにしています。
【大事なこと】
このイラストを見た人にどんな風に思ってもらいたいのかを着地点にしています。
楽しんでもらいたいのか、切なくなってもらいたいのか、すごいと思ってもらいたいのか、気楽に見てもらいたいのか、などを考えます。
今回はメイキング記事のためのイラストなので、見てくれた人の「役に立つ」ことと「目に留まる」ことを重視しました。
・「役に立つ」自分の得意なライティングを伝えて、役に立つ記事にしたい
・「目に留まる」女の子が楽しそうにしている様子を描いて、目に留まるイラストにしたい
といった発想から膨らませました。
今回は、イラストを見てくれる方に「画面のキラキラ感」と「楽しそうな雰囲気」を感じてもらいたいと思いました。
「天使風の女子高生が夜のテーマパークで友達とはしゃいでいる」というシチュエーションを選択しました。
カラーラフ2.構図を決める
「天使風の女子高生が夜のテーマパークで友達とはしゃいでいる」という状況が決まったので、それが伝わることを目指して構図を考えます。
【大事なこと】
①投稿する場所に合わせてキャンバスサイズを決める。
②キャンバスサイズに対して、キャラの「顔」の大きさはどれくらいにするか意識する。
③良い構図が思い浮かばない時は、資料を沢山見る。
↓
①投稿する場所に合わせてキャンバスサイズを決める
今はSNSにイラストを投稿される方がとても多いと思います。
私もSNSに投稿しますので、「最終的に見てくれる人の前にイラストが届いた時の状態」を思い描いて、一番効果的なキャンバスサイズ・比率を決めています。
縦横の比率は9:16か、3:4か、正方形か、どれが一番印象的になるか考えて選びます。
スマートフォンでSNSを見ている方が多いと思うので、縦長キャンバスにすることが多いです。
今回はホームページに掲載していただくことも考えて、縦長すぎない3:4にしました。
web上に掲載するための画像は私の場合1500×2000pxくらいに縮小しているので、描くときはそれよりも大きいキャンバスで描きます。描き終えてから最後に縮小したほうが粗の目立ちにくい絵になるためです。
また、別のイラストの場合も、もし紙に印刷するならばA4サイズの解像度350dpiが2894×4093pxなので、その程度の大きさがあると安心です。
3000×4000pxで新規キャンバスを作成しました。
②キャンバスサイズに対して、キャラの顔の大きさをどれくらいにするか
スマートフォンでSNS上でイラストを見ていただく際、顔が小さいと表情が伝わりにくくなるということがあると思います。今回は表情が大事なため、「どのくらいの顔の大きさなら表情がよく見えて、さらに周りの雰囲気も伝わるかな?」と、メインキャラの顔の位置と大きさをまず考えました。
キャンバスの中でまず第一にキャラの顔の位置・大きさを意識して構図を決めるのは非常におすすめです。
表現したいものに合わせて顔の大きさから決めると構図も考えやすいです。
③良い構図が思い浮かばない時は、資料を沢山見る
アイデア出しの時にメモした単語を、PinterestやGoogle、Unsplashなどで画像検索します。
手持ちの画集や写真集などの本も見ます。
イラストに入れたい要素ひとつひとつについて、
・〇〇と言えばこれ、という一般的で伝わりやすい状態はどんなものか
・その中でも特に面白かったり可愛かったりする状態はどんなものか
・今回描きたいイラストの雰囲気
ということを考えながら画像を集め、イメージボードを作ります。
重要なことですが、ひとつ良い資料を見つけてそれをそのまま描くためではなく、自分の頭の中でイメージを膨らませるために資料を集めます。
自分の中には一人分のアイデアしかないので、より素敵なアイデアを発想するためには、資料を沢山見たほうが良いと思います。
カラーラフ3.アタリを描いていく
テーマと構図が決まりましたので、頭の中のイメージをキャンバスに移していきます。
この状態のキャンバスから始めます。
板タブで作画していますので、ツールのウインドウ位置は長年この配置です。
最初のラフは柔らかいペンで太く薄く描いていくのがおすすめです。
はっきり描ける細いペンは細部を描くときに使います。
40pxの「鉛筆」で、不透明度を下げて描き始めました。
今は、丁寧にではなく素早く描きたいので、手ぶれ補正の数値を低くしておきます。
この先、清書の線画を丁寧に描くときは手ぶれ補正の数値を上げます。
【大事なこと】
細部ではなく、全体の印象を決めるために描きます。
頭の中のあいまいなイメージを、太いペンで画面に描き写します。
構図の根幹になる部分、「ものの配置」や「勢いの流れ」を重視します。
細いペンで描くと全体の流れや配置が掴みにくくなってしまうので、太いペンで始めます。
頭の中に浮かんだイメージは、絵のおおまかな印象です。
おおまかな印象の時点でバランスが悪いと、そのあと細部を丁寧に描き込んでも全体の印象は良くなりづらいです。
そのためアタリの時点では全体の印象を意識します。
どのような雰囲気を出したいのか、頭の中に浮かんだイメージを壊さないように、画面を小さくしたまま、太いペンで描き進めます。
画面を拡大してしまうと細部しか見えなくなってしまうため、全体をとらえられるよう画面は縮小したままにします。
アタリを重ねて修正し、この絵の雰囲気に合うポーズを探っていきます。
ポーズでは手の演技が特に重要です。
手は感情を表現することができます。
メインキャラがどんな感情なのか、楽しいのかぼーっとしているのか、手は握っているのか開いているのか、リラックスしているのか緊張しているのか、というように、シーンにふさわしい手のポーズを考えます。
ピースサインは指を顔に対して内向きに描くと可愛いかもしれないし、外向きに描くとはしゃいだ雰囲気が出るかもしれません。
ポーズを決める時に、体の向きや腕の開き、指先の方向や角度まで、今回のシーンに一番しっくりくる選択はどれか色々なパターンを検討して決めていきます。
この絵では元気な雰囲気を出すために、ピースは若干外向きにしました。
アタリを重ねて、だんだんとあいまいなイメージが自分の思いついた雰囲気に近くなってきました。
メインキャラの配置、体の流れに納得できたので次からもう少し細部を描き込んでいきます。
ポーズを少しずつ詰めていきます。まだ印象を探っているので、乱雑な作画です。
体の流れと配置が決まったので、少しだけ人体らしく肉付けしていきます。
体のバランスは、比率を覚えてしまうと格段に人体が描きやすくなります。
女性、子供、男性などで変わってくるので、よく描く人体から比率を覚えると便利です。頭の何個分のところに体の何のパーツがくるか、写真やイラストを参考にしてみてください。
服を着せます。
前景になる手も描いて、全体のシルエットを確認します。
ポーズがわかりやすいかどうか、シルエットがわかりやすいかどうかをチェックします。
キャラクターのシルエットがわかりやすく綺麗になっていると印象も良くなりそうです。
ピースサインは体のシルエットの内側に入らないように、シルエットの外に出していたほうがわかりやすいと思いました。
これで大まかなアタリができました。
この上からラフを描いていきます。
カラーラフ4.ラフの下地を描く
アタリレイヤーの不透明度を下げて、上から別レイヤーでラフな線画を描いていきます。
使用ブラシは「鉛筆」で、5~10px前後の細いペンで少しずつ細部を詰めます。
描き進めながらアイデアを思いつくことがあるので、よりわかりやすいもの・伝わりやすいものを選んでいきます。
アタリの時点ではリュックを背負っていましたが、正面から見たときにわかりにくいのでポーチを肩から提げました。
髪型も見映えがするようにロングヘアにしました。
表情は、思った通りの雰囲気になるかどうか考えながら何パターンか描いてみて、しっくりくるものを探してから決めます。
線が描けたら固有色を決めていきます。白色光の下で見たときの、キャラの設定の色です。
夜景でもキャラが沈まないように明るい髪色にしました。
華やかになるように小物の色を3色以上使っています。
キャラの設定が出来ました。
背景を描いていきます。まだラフなので細部は描き込まずに、まず雰囲気を出すことを重視します。
今回は夜景なので黒背景です。
夜景は、くっきりした建物を描いていなくても、奥行きが出るように光を配置するだけで遠近感を出しやすいです。
黒一色のレイヤーの上に、暗いオレンジで照明を描きます。使用ブラシは「ペン」です。
レイヤーは分けてください。
照明を描いたレイヤーをコピーして、レイヤーのブレンドを「加算・発光」にします。[フィルタ]→[ガウスぼかし]を使い、ぼやけた光を重ねて発光物のグロー(輝き)を表現します。
今回のイラストは、このような暗い背景の中に発光物とグローがある演出を多用します。
この時、レイヤーはすべて分けておいてください。
後でこれらのレイヤーをひとつひとつ整えることで、ラフをそのまま清書に使えます。時間短縮になり便利です。
さらに別レイヤーを上に新規作成して、ブレンドを[加算・発光]にします。
「イルミネーション」ブラシで玉ボケした光を加えます。
ブラシの[前景色を適用]にチェックを入れ、暗いオレンジを選びます。
[色相ジッター]の数値を上げると、色相がばらけてオレンジに近い他の色が混ざってくれます。
メインキャラとの配置のバランスも見ながら、背景に観覧車とメリーゴーランドのシルエットをざっくり入れます。これも別レイヤーです。
前景の手もおおまかに入れて、背景・キャラ・小物という全体の配置が見えてきました。
ここまでがカラーラフの下地です。
今はまだラフなので、細部のディテールを描き込まず、色や構図という大きな雰囲気を決めていく作業です。
ここからは、キャラに当たっている光やカゲの色を決めます。
キャラに当たっている光はイラスト全体の雰囲気を左右する大事な要素のため、特にページを割いて流れをご覧いただきたいと思います。
・夜景の中にいる
・光がキラキラして綺麗
・温かい雰囲気
という状態を目指していきます。
→次回は「下準備②ライティングを決める」に続きます。
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