2024.03.01
【お悩みコラム】他の絵描きさんに嫉妬してしまう時、どうする?
突然ですが、あなたは絵を描くうえで誰かに嫉妬したことはありますか?
「同じジャンルの絵描きさん、自分より後から来たのにいいねやフォロワーの数が多くて嫉妬する」
「仲の良い相互さんなのに心の中ではずっと嫉妬している…」
「嫉妬してしまう自分に自己嫌悪」
「自分と絵のレベルは変わらないのになんであの人の方が評価されるの?」
あまり表立って口にしない「嫉妬」という感情、実際のところ多くの人が悩んでいるのではないでしょうか?
実際、ネットで「絵描き 嫉妬」で検索すると、多くの相談、議論の記事が出てきて、絵描きさんのお悩みの中でも大きなトピックだということがわかります。
せっかく始めた「絵を描く」という趣味・仕事、出来れば負の感情とも上手く付き合いたいですよね。
今回は、多くの絵描きさんとは切っても切れない「嫉妬」とその対処法について、私の体験談も交えて書いていきたいと思います。
Index
◆体験談:嫉妬しすぎてSNSアカウントを消した私
恥ずかしながら自分の話をします。
今から何年も前、まだ漫画の仕事をしておらず、趣味で絵を描いていた頃、私は嫉妬の塊と言っていいほど嫉妬心に悩んでいました。
当時二次創作のイラストを描いてSNSにアップしていました。だんだん同じジャンルが好きな友達も出来ました。
当時の自分の絵は、1枚の絵に対してTwitterでのいいねが100〜500程度でした。お世辞にも上手いとは言えないレベルですが、細々とそれなりに交流を楽しんでいました。
ところが、交流が続くにつれ、だんだん相互さん含め周りの絵描きさんの作品への嫉妬心が生まれてきました。
・よくリプを飛ばし合う仲の相互さんの作品だとしてもいいねが多いと嫉妬
・後から界隈に入って来た人がいとも簡単に自分のフォロワー数を追い越していき嫉妬
・同人誌の売れ行きが自分より明らかに多くて嫉妬
今考えるとなんでこんなに嫉妬心が生まれるんだ?と不思議なくらい、嫉妬に囚われていた時期がありました。
そして、嫉妬する自分自身に対して「なんて自分は性格が悪いんだ…」と自己嫌悪に陥り、結果、イラストを描いても楽しくなくなってしまい、交流も気が重くなり、ある日急に思い立ってアカウントごと消して界隈から去りました。
◆あの嫉妬心の原因はなんだったのか
その後、結婚・出産や移住、ビジネス漫画家業の開業の準備などで忙しく、しばらくSNSや同人の世界から離れていました。
そして今、漫画の仕事と並行してまた趣味のイラストをSNSに投稿し始めたのですが、以前とは別人のように穏やかな気持ちで絵を描けており、たまに生まれる嫉妬心とも上手に付き合えています。
今振り返ると、あの頃の自分は、
・自分がどういう方向性で創作活動をしたいのかちゃんと考えていなかった
・絵そのものを評価してほしいというより「自分を見てほしい、誰かにちやほやされたい」という気持ちが強かった
・SNSに依存しすぎた生活だった
こんな感じで、自分自身のことを冷静に分析できていなかった上、絵の技術を上げたいというよりもSNSでのいいねの数に固執していたこと、「作品を評価して欲しい」という欲求に囚われていたことが原因だったと思います。
さらに今思えば、あの頃の自分は極端に自己評価が低かったと思います。
自分に自信がなく、自分の絵のいいところがまったくわかりませんでした。なので、嫉妬した時に「でも私の絵はここが強みなんだからいいじゃん!」と気持ちを立て直せる軸のようなものがなかったのです。
「自分はダメな絵描きだ」という気持ちと、「自分を認めてほしい」という正反対の感情が絡み合いぐちゃぐちゃになっていたように感じます。
☆対処法①:嫉妬は悪いことではない!嫉妬する自分の心を受け入れよう
嫉妬というと「醜い感情」「汚くて持ってはいけない感情」「恥ずかしいこと」というイメージが強いと思いますが、
嫉妬心はそこまで悪いことではありません!してもいいんです!
嫉妬は、大小ありますが必ず人間誰しもが持つ感情で、あって自然なことです。
特にイラストや小説、アート関係といったクリエイティブな界隈では、これ!という明確な正解がありません。何が評価されるのかは時代や流行でも変わるため、誰にもわからないのです。
そういうふわっとした世界なので、嫉妬が生まれやすい趣味とも言えます。
「嫉妬する自分はなんて醜いんだ…」と自己嫌悪になるのではなく、「嫉妬しちゃった!そういうこともあるよね!」と嫉妬する自分の気持ちを受け入れてあげましょう。
☆対処法②:嫉妬の対象を一旦全部シャットアウトする
嫉妬の具体的な対処法のひとつとして、「嫉妬の対象を見ない」というのが効果があります。目に入るから嫉妬してしまうのであって、そもそも見えなくしてしまうのです。
私もまずこれを実践しました。
・SNSで嫉妬の対象となる絵描きさん、相互の絵描きさんを全部ミュートする
・pixivなどで検索をかけない
・そもそもSNSを断つ
などです。荒療治に思えますが、これが結構効果があって、物理的に自分の目から遠ざけることは有効でした。
「ミュートは悲しい…」と思うかもしれませんが、自分の嫉妬心に対する分析ができるようになるまでは壁打ち化するのもアリだと思います。
☆対処法③:自分が具体的に何に嫉妬しているのか分析する
嫉妬を感じた時、その嫉妬心の中身まで分析してみたことはありますか?多くの人はそこまで突き詰めて考えたことがないと思います。
【例】絵が上手く、いいねもたくさん付き、友達もたくさんいるAさんに嫉妬している
→Aさんの「絵の技術」に嫉妬しているのか?
→Aさんがいいねをたくさんもらっている「評価の高さ」に嫉妬しているのか?
→Aさんの周りに人がたくさん集まっている「交友関係が充実している様子」に嫉妬しているのか?
同じ嫉妬でも、よく考えてみると嫉妬の中身が見えてきます。
中身が違うと対処法も違ってきます。
・技術の高さ:これはもう、自分も練習や研究を積んで画力を上げるのが一番の対処法です。難しいように思えますが、嫉妬の対象が人間ではなく絵そのものなので実は一番シンプルで対処法が明確です。
・評価の高さ:いいねが欲しいなら、「どういう絵がいいねがたくさんもらえるのか?」を研究しましょう。
Aさんの絵の具体的にどういう点が大衆に受けているのかを考えてみます。
それが投稿頻度の高さなのか、流行りの絵の描き方をしているからなのか、時事ネタをうまく取り入れているからか、など、見えてくるものがあると思います。
・交友関係の充実:絵が上手いことと、友達が多いことはまったく違うスキルです。
仲良しな人が多くて羨ましい!と思うなら、自分も交流に力を入れて活動するしかありません。
実はこの「交友関係に嫉妬している」パターンが一番厄介です。交友関係を重視するあまり、イラストが疎かになったり、自分の心が疲れてしまったりします。しかも無限に続くわけです。
このタイプにこそ、私個人的には「イラスト以外の趣味を作る」「日常アカウントと分ける」がおすすめです。
イラストの世界だけで交友関係を作ってしまうと、そこにずっと縛られることになり辛いです。イラストの話題以外の繋がりを持つことで、イラストアカウントへの固執が減り、嫉妬心も減っていきます。
私自身、趣味のイラストアカウントの他に、子育ての情報交換用の育児アカウント、イラスト以外の趣味のアカウントなど複数の顔を持つようになってから、イラストアカウントの交友関係への固執が少なくなり、結果嫉妬心が生まれたとしても別のところで消化できるようになりました。
遠回りな方法に思えますが、イラストアカウントで気持ちが辛くなった時の逃げ場のような場所を作っておくといいと思います。
☆「悪い嫉妬」「良い嫉妬」
人間は、自分よりはるか上の存在には嫉妬しません。例えば、一般人が「大谷翔平はあんなに成功して嫉妬しちゃう!」とはなりませんよね。
自分とレベルが近い人間、ちょっと頑張れば手の届きそうなレベルの人間に対して嫉妬を感じがちです。これが厄介な所です。身近な人に嫉妬を感じてしまうため、トラブルに発展しやすいのです。
一番やってはいけないのは、嫉妬心を相手にぶつけることです。
例えば、
・直接悪口を言う、仲間内で悪口を言う
・SNSで匿名で中傷する
・相手の作品を下げるようなことを言う
などです。自分はその人に嫉妬しているかもしれませんが、自分の心の中の問題であり、相手は何も悪くありません。これは「悪い嫉妬」です。絶対にやめましょう。やってしまいそうになったら、まずはその人から距離を取り冷静になりましょう。
「良い嫉妬」とは、その嫉妬心を受け入れて自分の中だけで昇華すること。もし可能なら嫉妬心すらエネルギーに変えることです。
「あの人絵が上手い!!嫉妬する!くそ〜〜!!自分も上手くなってやる!!」
と、嫉妬心をプラスの方向に利用出来たら最高です。(なかなか難しいですが)
「嫉妬心をポジティブに利用する」「利用できなそうなら嫉妬の対象から距離を取る」
時と場合によってこれらを使い分けられるようになれば、嫉妬を上手くコントロールできるようになるでしょう。
今回は絵描きさんにはあるあるの嫉妬とその対処法について体験談を交えてご紹介しました。
人それぞれ性格が違うので、適切な対処方法も違うと思いますが、嫉妬はして当たり前だということをまずは受け入れてみるところから始めてみてください。
皆さんのお絵かきライフが楽しいものとなるように祈っています!
(絵・文:はらなおこ)
\ 使い方記事の要望を受け付けています /