2023.09.11
三ツ川ミツイラストメイキング2 | 下準備②ライティングを決める
カラーラフで大事なのが、メインキャラに当たっている光(ライティング)です。
下準備の2つ目の工程ではレイヤーを分けての塗り重ね、本作業で迷わないようにライティングを意識しながら色を決めていきます。
ここまでの工程の記事はこちら
三ツ川ミツイラストメイキング1 | 下準備① 全体の工程とカラーラフ
Index
カラーラフ5.ライティングを決める
【大事なこと】
この時点で、完成形の色を決めてしまいます。
そのために、
①光源の設定
②レイヤー構成の作成
をしていきます。
【大事なこと①】光源の設定
空間の中にいるということは、その空間を満たしている光の中にいるということです。
状況が伝わるような色を塗るために、主光源・環境光・反射光の色をあらかじめ考えておきます。
これを設定しておくことで、その空間にいる雰囲気が出せたり、どこに何色を塗るか迷いにくくなります。
決めておくのは、光の色、強さ、数、方向などです。
今回のイラストでは、このように設定しました。
主光源(直接照らしている光):天使の輪が頭上から白い強い光を放っている。周囲の照明やイルミネーションにも照らされている。
環境光:周囲に照明がたくさんあり、空間がまんべんなくオレンジ色に照らされている
反射光:地面からの弱い照り返し。温かい色味にするためオレンジ系にする
ただし実際は見映えのために光源を増やしたり、その時の都合で色を変えたり、非現実的な明暗にすることも多いです。
正確にこうであるべきととらわれずに、イラストとして楽しめることを重視しています。
完成形のイラストではこのようになりました。
【大事なこと②】レイヤー構成の作成
ラフの時点でレイヤーの構成を決めると、このあとの清書が楽になります。
以下の画像をご覧ください。
固有色の上から、光の種類ごとにレイヤーを重ねて空気感を作っていきます。
複雑そうに見えると思いますが、これはこの通りに塗っていくとキャラが塗り終わるレイヤーのセットです。
「主光源の役割をするレイヤーはこれ」「反射光の役割をするレイヤーはこれ」と決めて上に重ねていくだけで、塗りがリッチになりキャラの見映えが整います。
【レイヤー構成を決めておくメリット】
・固有色をレイヤーで変化させていくので、色で迷いにくくなります。
・レイヤーが分かれているので後からの部分ごとの調整もやりやすいです。
・ラフで素早くざっくりと置いていったレイヤーをあとで整えると清書が終わります。
・一度こうしてレイヤー構成を決めておけば、他のイラストを描く際にも転用できます。同じ手順でレイヤーを重ねていけば作業が進むので、時間の短縮になります。特に連作で同じ雰囲気のイラストを作りやすくなります。
このレイヤー構成は私が一つ一つの役割を付け足していって出来たものなので、まだ完璧とは言えないかもしれません。
最初からすべてを把握して使いこなしていただくというよりは、部分的に取り入れてみていただくのがおすすめです。
以下の画像を元に、塗りやすい順番でひとつひとつ説明していきます。
流れとしては、最初に全体をカゲに入れて暗くして、そのあと強く光っているものから塗っていくことになります。
ライティングの前に:模様
このあとの本作業で清書をしていく際は、キャラの服の「柄」などは先に描いておくほうがいいのですが、今は全体のバランスを作っているラフの段階なので細部は描かずにおきます。
ライティング1:全体乗算
レイヤーのブレンド:「乗算」
まず、光が当たる前の空間をイメージします。
本来はここは夜なので、明かりが無ければ真っ暗の黒一色になります。
そこに光が存在してはじめてキャラが見えるようになるはずです。
ですが、このシーンはオレンジの環境光が辺りを満たしているため、「黒が弱くオレンジの光に照らされた色」で塗りつぶします。
下塗りレイヤーの上に新規レイヤーを作り、それを下塗りレイヤーにクリッピングして、ブレンドを乗算にしてください。
ライティング2:主光源
レイヤーのブレンド:「スクリーン」
主光源の影響を一番先に描きます。
このイラストの場合は、天使の輪による上からの明るい光を優先しました。
強く明るい場所は視線を集めるので重要なため、早いうちに描いておきます。
上から照らしている光なので、立体的に考えたときに上を向いている面を塗ります。
頭の上、腕の上面などです。
強く明るい部分は白に近づくため彩度が下がるので、彩度が鮮やかになる「加算・発光」ではなく、白に近づく「スクリーン」ブレンドにします。
ブラシは「ペン」です。この新規レイヤーは下塗りのレイヤーにクリッピングします。
ライティング3:主光源グロー
レイヤーのブレンド:「加算・発光」
強い輝きが周りに光を放っているグローを表現します。
先ほど入れた強く明るい場所の周りに、エアブラシでふんわりと色を拡げます。
エアブラシの不透明度を9%ほどまで下げると薄いグラデーションを作りやすいです。
色は画像を参考にしてください。
明るく白くなっている部分とカゲになっている部分の「中間部分」の彩度は上げたいので、グローの彩度は高めにします。
色相環の中の四角で、右に寄せるほど彩度が上がります。
輝いている部分から広がるふんわりとした光が背景にも届いててほしいので、このレイヤーは下塗りにクリッピングしません。
ライティング4:全体カゲ
レイヤーのブレンド:「乗算」
主光源(天使の輪)から離れるごとに暗くなっていくため、ざっくりと大きなカゲを薄く入れます。
顔は重要なのであまり暗くならないように、塗らないでおきます。
また、顔にカゲを入れてしまうと立体感が強調されすぎてしまうことがあります。
可愛さや格好良さを優先して、デフォルメを崩さないために立体感をつけすぎないようにしています。
光が届かない部分は彩度が低くなるため、カゲの色は彩度を低く、グレーに近い色にします。
色相環の中の四角で、左に寄るほどグレーに近づく=彩度が低くなります。
ブラシは「ペン」です。
レイヤーの不透明度で明るさを調整します。
このシーンは周りにもたくさん光があるので、キャラもまんべんなく薄く照らされているため、あまり濃いカゲにはしません。
ライティング5:肌オーバーレイ
レイヤーのブレンド:「オーバーレイ」
肌の透明感や血色を出し、顔を目立たせるために肌色の部分だけオーバーレイで照らします。
特に背景が暗いイラストのときに、顔が沈んで表情が見えなくなってしまわないようにするため有効です。
オレンジがかったピンクで血色の良さを表現します。
ブラシは「ペン」です。
カゲで沈んだ色を明るくするためのレイヤーなので、肌オーバーレイのレイヤーはカゲレイヤーよりも上の位置に置きます。
ライティング6:髪ハイライト
レイヤーのブレンド:「加算・発光」
前髪のハイライトです。髪の毛がつやつやしていることを表現するために、鏡面反射しているようなイメージで周囲の光を反射させます。
主光源よりは弱い光なので、暗めの色を使って発光レイヤーで塗ります。
ブラシは「ペン」です。
彩度の関係は以下のようなイメージです。
・特に明るいので白に近づく部分(彩度が低い)
・中間の、ちょうどよく光が当たっている部分(彩度が高い)
・暗いカゲの部分(彩度が低い)
このため、髪のハイライトでは彩度を高めに保つため発光レイヤーを使います。
レイヤーの位置は、カゲのレイヤーより上にします。
ライティング7:発光物
レイヤーのブレンド:「加算・発光」
光るアクセサリーなど、暗闇の中で光るものは出来るだけ発光させると画面が華やかになります。
このイラストではテーマパークで買ったおもちゃやアクセサリーが光っています。
鮮やかな色にします。ブラシは「ペン」です。
レイヤーを上に重ねてクリッピングします。
ライティング8:発光物グロー
レイヤーのブレンド:「加算・発光」
発光しているものの周りにぼやけた光を描くことで輝きを表現します。
発光物の色に合わせてエアブラシで周りを光らせます。
レイヤーを上に重ねてクリッピングします。
ライティング9:髪裏
レイヤーのブレンド:「加算・発光」
髪の透明感を出すために、後ろ髪の背後の部分を発光させます。
綺麗な雰囲気が出やすい部分なので、なるべくイラストに取り入れるようにしています。
元の髪の色とのバランスを見て色を選びます。
明るさの加減はレイヤーの不透明度で調整します。
ライティング10:薄いカゲ
レイヤーのブレンド:「乗算」
これは細かくカゲを入れる工程なので、ラフの時点では省略します。
清書の時にはこの流れで入れます。清書の段階のときに詳しくご説明します。
ブレンド「乗算」の新規レイヤーだけ用意しておきます。下塗りに上から重ねてクリッピングします。
ライティング11:反射光
レイヤーのブレンド:「加算・発光」
照り返しがあるとメインキャラが鮮やかに照らされ、立体感が出てリッチな塗りになります。
地面から発された下からの光を受けているイメージで色を置きます。
反射光はカゲの中を照らす光なので、強い光や薄いカゲを置き終わった後のこのタイミングで加えます。
弱い光なので発光レイヤーで暗い色を使います。彩度は高めにすると綺麗です。
この反射光の色は、主光源と反対ぐらいの色相(補色やそれに近い色)を使うと印象的になります。
色の組み合わせで雰囲気を変えられます。
ただし、今回のイラストでは温かい雰囲気にするため寒色を避け、暖色の色相にしました。
レイヤーを上に重ねてクリッピングします。
ライティング12:顔オーバーレイ
レイヤーのブレンド:「オーバーレイ」
顔を明るくするため、またほんの少しだけ立体感を出すために顔の中心を照らします。
あまり彩度が高くない、白に近い色にします。
レイヤーを上に重ねてクリッピングします。
ライティング13:白オーバーレイ
レイヤーのブレンド:「オーバーレイ」
シャツの襟、羽根などの白い部分は、他よりも少し光を多く反射しているイメージで少しだけ明るくします。
白一色で塗ります。
オーバーレイのレイヤーを、不透明度を調整しながら重ねます。
ライティング14:調整オーバーレイ
レイヤーのブレンド:「オーバーレイ」
立体感を少しだけ強調するための薄い色を入れるレイヤーです。今はラフのため省略します。
清書の際にしっかり入れるので、清書の段階でご説明します。
あらかじめ「オーバーレイ」の新規レイヤーだけ用意しておきます。下塗りにクリッピングします。
ライティング15:オクルージョンシャドウ
レイヤーのブレンド:「乗算」
物体が接していてどの光も届いていない位置に細かい暗いカゲを入れます。オクルージョンシャドウといいます。
色に強弱がつき、画面を引き締めることができるので、入れておくとクオリティが上がります。
細かい部分なのでラフの時点では入れません。清書の段階でご説明します。
あらかじめ「乗算」の新規レイヤーだけ用意しておきます。下塗りにクリッピングしません。
ここまでがラフの時点で用意したいレイヤーです。改めてこちらが一覧です。
これでメインキャラを塗るレイヤーのセットが揃いました。
ここまででやっと、背景の色とキャラの色が見えてきました。
本作業では、これらのレイヤーを整えていくだけで塗りが終わることになります。
ただし、カラーラフをこれで完成とする前に、全体の雰囲気をもう一度見直して、「これで清書に進んで大丈夫かな?」と考えてみてください。
形を整えて塗っていく清書のときに何度もやり直しが発生すると時間がかかってしまいます。
そのため、カラーラフのときは粗く素早く塗って、完成形が見えるまで考えます。
カラーラフというざっくりした段階ですでに雰囲気を良くすることができていれば、その雰囲気を清書の終わりまで保ちやすいです。
次の段階がカラーラフの最後です。全体の雰囲気をよく調整して、ラフを完成させます。
→次回は「下準備③全体の雰囲気を決める」に続きます。
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