2023.10.18
【練習方法】動きのある人を描きたい!ジェスチャードローイングのすすめ!
『全身の絵』…人物のイラストを練習している人にとって、まず誰もがぶち当たる壁ではないでしょうか?
全身の絵がうまく描けなくて、イラストや漫画制作の趣味を途中で諦めてしまう人も少なくないと思います。
また、上達には地道な練習や勉強が求められるので、苦痛に感じる人もいるのではないでしょうか。
全身の練習方法はたくさんありますが、今回は「体の動きやリズム」に着目した練習方法である【ジェスチャードローイング】についてご紹介します。
Index
絵が硬い・応用効かない問題
「肘の位置はお腹の真ん中と同じ」「股下から膝、膝からかかとまでの長さは同じ」…など、イラスト中級者の方は、体の構造についての基本的な知識はすでにお持ちだと思います。
アタリもきっちり関節まで描いて…という方も多いのではないでしょうか?
もちろんそれで正解なのですが、一方で、人体の構造を意識するあまりガチガチに硬い絵になってしまっていたり、イメージしているポーズが描けなくて悩んでしまったり…と行き詰まってしまう人もいるかと思います。
・体の構造はなんとなく分かっているけどイラスト化できない
・描いたイラストに動きがない、動きが硬い
・ポーズのレパートリーがない
・イラスト中級者だが手癖が凝り固まって困っている
このように主に「動き」についてお悩みを抱えている方に、今までとまったく新しい描き方をするジェスチャードローイングは特におすすめの練習方法です。
やり方自体は簡単で初心者の方でも取り組めるので、ぜひチャレンジしてみてください!
ジェスチャードローイングって何?
ジェスチャードローイングとは、モデルのポーズを短時間で素早くスケッチをする練習方法です。
1ポーズ30秒〜長くて5分程度の時間制限で行います。
時間制限の中で必ず全身を描き上げます。
「ジェスチャー=身振り・仕草」という名前の通り、この方法の一番の特徴は【動きを描くことに全振りする】という点です。
この2体の絵を見てください。
どちらも同じモデルを使っています。
(ポーズ画像はPOSEMANIACS様(https://www.posemaniacs.com/ja)よりお借りしました。)
左はモデルの頭身やパーツの角度をできるだけ忠実に描いています。
右は動きと印象を重視し、実際のモデルのパーツよりも足や腕の長さを誇張して描いています。
この右側のような絵を描くのがジェスチャードローイングです。
人体の解剖図を見て体の構造を正確に練習する方法や、モデルを細部までじっくり観察してデッサンする方法とは違い、細かい描き込みはしません。
ジェスチャードローイングでは、とにかく体の動きの流れや力の入り具合などを直感的に感じ、絵にします。
全身のパーツの配置や大きさ・構造は覚えたけど、自分の描く絵には動きがまったくない…という人に特に試してほしいです!
・短時間で出来るので、創作の時間を削らずに済む
・細かい描き込みをしないので気軽に続けられる
これらも大きなメリットです。
学校や仕事が終わった後の限られた自由時間の大半をデッサン練習にあてるのは難しいですし、趣味の絵を描く時間もちゃんと確保したいですよね。ジェスチャードローイングは1回が短時間なので、無理なく続けられます。
「今日は1分×10ポーズ」「今日は疲れたから5ポーズにしよう」と、自分で時間を調整出来るのも魅力です。
☆早速やってみよう!
◎必要なもの
・アナログの場合…紙とペン
・デジタルの場合…いつも使っているお絵かきソフトやツール
・モデルとなる人物の写真や練習用動画など
用意するものはこれだけです!自分が使い慣れたもので描いていきましょう。
モデルの写真や動画は、全身が写っているのであればどんなものでもいいのですが、
私のおすすめは「ジェスチャードローイング用の動画」です。
YouTubeなどで検索すると、ジェスチャードローイングをやるための動画チャンネルが結構出てきます。
私が使わせていただいているのは、『GES DRAW PARTY』というチャンネルです。
https://www.youtube.com/@GESDRAWPARTY
時間のカウントも自動的にやってくれますし、ポーズもどんどん切り替わっていくのでとても親切なチャンネルです。
アナログの場合は、紙とペンの横にスマホを置くだけでいいですし、デジタルの場合は、イラストソフトの横に動画のウインドウを配置するだけでいいので簡単です。
◎まずは動きの流れを掴んでみよう
とりあえず30秒やってみましょう!
やってみればわかると思うのですが、最初はまったく何もかけないと思います。
まずは、今まで自分がやっていた描き方を一旦全部忘れて、頭を空っぽにしてみましょう。
①モデルを見た時の「第一印象」を考える
(フリー素材写真はPhotoAC様からお借りしています)
このモデルを描くとします。この人をパッと見た時、あなたはどんな第一印象を受けましたか?
この第一印象を捉えることがとても大事です!
細かいデッサンの追求ではなく、「柔らか」「力強い」「伸びやか」など直感的な印象を伝えるための絵、それがジェスチャードローイングで描く絵です。
②一番強調したいラインを探す
30秒で体の各パーツまで描き切るのはほぼ不可能です。
モデルのポーズを見て「一番長い」「一番強調したい」と思う線を探し出します。
例えば上の画像だと、頭から始まって反った腰、そしてすらっと伸びた足先までの一直線のラインが美しいですよね。
そこがこのポーズの良い所だなと思ったので、この直線ラインを取っていきます。
ポーズを観察し、このメインのラインを描いただけで、もうジェスチャードローイングの入門としては大成功です!
ここで大切にしたいのが、①で受けた第一印象です。
実際のモデルの頭身を正確に追うよりは、多少デッサンが狂ってもいいので、表現したい印象をダイナミックに線で引きましょう。
まずはこの「メインの動きの線を探す」ドローイングを繰り返しやってみましょう!
回数を重ねるうちに、迷う時間が短くなり、シンプルにスッと描けるようになってきます。
③頭、胴体、腰を書き足す
ドローイングの時間を1〜2分に伸ばしてみましょう。
最初に引いたメインの線を元に、体のパーツを描き足していきます。ここでも細かい描写はいりません。
最低限、頭、胴体、腰、手足の向きぐらいがあればOKです。
ここでも、腰のひねりや足の流れなど、第一印象で「いいな」と思った点を強調するように描きます。
柔らかい印象が描きたいなら曲線を使い柔らかく、力のこもった印象が描きたいなら直線を使い力強い線を使うと◎です。
ジェスチャードローイングではこの③の工程ぐらいまでを繰り返し練習していきます。
④余裕が出てきたら要素を足していこう
(フリー素材写真はPhotoAC様からお借りしています)
ジェスチャードローイングの練習を積んで、動きの把握が出来るようになってきた、余裕が出てきたと思えたら、最後に洋服や表情などを描き足してみましょう。洋服も細かいディティールを描きこむ必要はありません。
どういうシワができているか、スカートがどう揺れているか、などとにかく動きを把握することに集中しましょう。
ここまで出来るようになったら、全身絵に対する自分の感覚、人物のポーズの見方がかなり変わっているのではないでしょうか?
☆とにかく継続が大事
他の練習方法も同じですが、ジェスチャードローイングは「ここまで描けたら卒業!」という基準がありません。
筋トレと同じで、コツコツとやればやるほど自分の身になります。
特にジェスチャードローイングは1回が短時間なので、少しやってしばらく休んで…サボって…と間を長く空けてしまうと、感覚が失われてしまいかねません。
1日3ポーズでもいいから、コツコツと継続していくことがなにより大切です。
色々な方のジェスチャードローイング体験談を読むと分かるのですが、1000、2000、3000体…と続け、ある時急に描ける感覚が掴めた、とおっしゃる方が多いです。
この「描ける感覚」に到達した時、あなたのイラストレベル、人体の観察眼は最初とは比べ物にならないぐらい進化していることでしょう。
私も今年からジェスチャードローイングを練習として取り入れています。
まだ500体ほどなのですが、現時点でも最初の1体と今の1体では仕上がりが全然違います。
ポーズのしなやかさや生き生きとした動きを捉える目が養われている感覚がありますし、肩の力を抜いてスッと描けるようになりました。
これから1000、2000と重ねていくごとにもっと力がついたらいいなと思います。
面白い変化は、街ゆく人や自分の家族をついポーズや体の動きに着目して見るようになったことです。
人間の動きの観察が楽しいということに気がついたこともひとつの収穫だなあと思います。
人を観察する「目」は、イラストを描く時や漫画の構図を考える時にとても役に立つと思います。
今後も続けていきたいと思います。
今回はジェスチャードローイングをご紹介しました。
細かなデッサン力ではなく、動きを見る目を養う方法としてとてもおすすめです。
継続は力なりです。趣味絵を描く前の準備体操として習慣化してみませんか?
(絵・文/はらなおこ)
X(旧Twitter):@nao_comic
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