2023.04.18
初心者マンガ講座18 マンガを完成させられない時の対処法
こんにちは、ГФ(ゲーエフ)です。
ここまでメディバンペイントでマンガを描くやり方について解説してきましたが、最終回となる今回は「マンガを完成させられない」という悩みにお応えします。
マンガを描きたいと思って途中までは描いたけど、結局完成させられなかった… このような経験を持つ人は少なくないと思います。私もかつてはそうでした。
今回は、マンガを完成させたい人のために、どのように考えればいいかを解説していきます。
Index
なぜ漫画を完成させられないのか?
漫画を完成させることができない理由としては、以下の5つが挙げられると思います。
①漫画を描く時間がとれない(とれなくなった)
②話が思い浮かばない
③描きたい絵が描けない
④自信がない
⑤飽きた
一つ一つ見ていきましょう。
漫画を描く時間がとれない(とれなくなった)
漫画はそもそも描くのに時間がかかります。
何を言ってるんだ、週刊連載というものが存在するということは一週間で20ページぐらい簡単に描けるはずだ、と思う方もいるかもしれませんが、週刊連載は多くのアシスタントや編集者、漫画家の家族のサポートがあるからなんとか成り立っているのであって、多くの場合は漫画家一人だけではやっていけません。特に昨今の漫画は高いクオリティの絵が要求されるため、その傾向は強まっています。簡単な絵でページ数も少なくてよいというのでなければ、一人で週刊連載を続けていくことは困難です。隔週や月刊連載は一人でやっている人も多いですが、それでもかなり筆が速くないとできません。
普段学校に通っていたり他の仕事をしたりしている人は帰宅してから制作をするか、休日を使って制作することになると思いますが、疲れていたり他の予定があったりで描けない、ということもあるかと思います。プロでも睡眠時間を削って無理をして描いていることが多く、そのせいで身体を壊してしまう人もたくさんいます。
なので、漫画を描くのに時間がかかるのは当然のことだと割り切った上で、どうするべきか考える必要があります。
時間をかけて作ってもいいんだという意識をもって無理のないスケジュールで描く、少ない時間で仕上げられるように絵を描くスピードを上げたり、素材の使い方を覚えたりする、などです。
まずは半年くらいかけてもいいから1本作ってみましょう。「1本描くのに半年もかかるんじゃプロなんて無理だ」と思うかもしれないし実際そうではあります。しかし、漫画を描くということ自体がトレーニングでもあり、描き続けることで慣れてきて描く速度が上がってきます。1本32ページを描くのに最初は2、3ヶ月かかっていたけれど、ずっと描き続けていたら10本目は1ヶ月で描けるようになった、ということはザラにあります。速くなればプロの道も見えてきます。とにかく描き続けることが大事です。
また、漫画を描く時間を確保するために日々の生活を見直してみることも大事です。少し早く起きて学校や職場に行く前に1時間ほど描いてみる、ゲームやSNSに遣っている時間を減らしてみるなど、隙間の時間を効率的に使うようにしてみるとよいかもしれません。
なお、漫画を描く時間を確保するために仕事を辞めるのは、描いている漫画が売れたりして軌道に乗ってお金の心配がなくなってからにすることをおすすめします。お金がなくて生活が苦しくなると漫画どころではなくなり、心身の健康を損なう危険性があります。追い込まれて真の実力を発揮するというような漫画のような展開は大抵の場合起こらないので現実的に考えましょう。
話が思い浮かばない
漫画を完成させられない人が「話が思い浮かばない」という悩みを抱えている場合は「最初からまったく思い浮かばない」のではなく「途中まではできたけど、そこからどうすればいいか分からない」ということが多いのではないかと思います。
途中までできているのならば、その時点でのキャラクターの立場について考えてみましょう。このキャラはどう考えているか、どのような行動をするか、さっきさせた行動を本当にこのキャラはするか、などです。行き詰まっている展開の少し前の部分が間違っている可能性もあります。キャラに感情移入しなくても、演出家の立場から考えてみるのでもいいです。キャラの設定(好きな食べ物、癖、家庭の事情、過去の因縁など)から話を広げていくこともできます。
また、順番に作るのではなく、思いつかないところはとりあえずとばしてその先の展開を作ってしまうのもありです。先の部分を作ることで、その展開にするには何を説明しなければいけないかが分かってくると、思いつかなかった部分に何を入れるべきか考えやすくなってくると思います。
事件やトリックなど、ちょっと違った要素やアイディアが欲しい時は、発想や見方を変えてみるとよいです。他の作品(漫画だけでなくイラストやゲーム、小説、映画なども含む)を見ることは他のクリエイターの発想を見ることと同じなので、作品の舞台や出てくるアイテム、セリフや説明、登場人物の考え方から何かしらのヒントやインスピレーションを受けとることができるかもしれません。身の回りのものやニュースで出てきたことについて調べ、思わぬ知識を得ることで展開を思いつく可能性もあります。外に出て散歩してみたり、部屋の掃除をするなどして体を動かすのもありです。一旦別のことで脳をリラックスさせて、煮詰まっている状態から脱すると、別の見方で考えることができるようになります。
また、そもそも結末がきれいにまとまっている必要もないのです。既存の漫画や映画や小説などでも、ぶつ切りのような終わり方をしているものはたくさんあります。描きたいことが描けていればとりあえずOKです。「結末がまとまっていない」と批判されたら、開き直って「ああそうだよ文句あるか」と言い返してやりましょう。
描きたい絵が描けない
ネームは作ったけど肝心の絵が描けなくて手が止まるパターンです。難しいポーズやアングル、背景など、どう描けばいいか分からなくなってしまうという経験は私にもあります。
絵は練習するしかないのは当然として、そもそも描けないものを描かなくてもいいような題材を選ぶというのも大事です。ギャグ漫画は背景が適当でもいいのでおすすめです。
とりあえず人物だけ描いて完成させてみましょう。背景はその後で描き足していけばいいのです。
また、自分で描かなくても他の描ける人に頼んだり、背景のフリー素材を使ったり、意味深なトーンを適当に貼っておくというのもありです。プロでも背景が描けない人はたくさんいます。いかに上手く誤魔化すかというのも大事な技術なので使えるものは使いましょう。
自信がない
描いている途中で「こんな面白くない漫画誰も読まない」「こんなクオリティじゃ賞をとったり担当編集がついたりするわけがない」「時間をかけて駄作を作りたくない」「もっと上手くなってからにしよう」と思って手が止まるタイプです。
そもそもの話として、無名の素人の漫画は読まれません。いくら優れていようが面白かろうが読まれません。なんならプロの作品ですらなかなか読まれません。有名な人が宣伝したり企業が広告で売り出したりして人気作だとアピールしてようやく多くの人に読んでもらえます(なお、その後読み続けてもらえるかはまた別の話です)。本当にいい作品だと口コミでじわじわと人気が出ることもありますが、火がつくのがいつか分からない・低空飛行のまま終わることもあるので、あまり期待しすぎるものでもありません。
モチベーションが落ちてしまうのならば、何のために漫画を描いているのかをはっきりさせましょう。作品を世に存在させたいからか、多くの人を楽しませたいからか、「神作家」として他人に褒められたいからか、漫画を描いている自分が好きだからか、漫画を描くことが好きだからか、描いた漫画が売れまくって大儲けしたいからか、などです。目的は一つではないかもしれませんが、他人を楽しませたい、褒められたい、売れたいという考えが少しでもあるのならば、それ相応のクオリティが要求されるのは当然のことかもしれません。しかし、そもそも完成させないと他人が評価することができないので、良作か駄作かも分からないし、どのように改善していけばいいかも分からないのです。
一方で、世の中にはたくさんの駄作があります。有名な作家も駄作を産んでいます。なので、別に駄作を作ってもいいのです。駄作かどうかは読む人によって変わりますし、どう見ても駄作なのにSNSのノリでバズったりして運良く評価されるものもあります(地力がないとその後の人気は維持できませんが、一瞬でもバズることができれば儲けもんです)。自分では駄作だと思っていた作品が、多くの人にとっては面白かったということもよくあります。また、本当は面白いのに、ずっと描いていて同じものを見続けてきたせいで描いている本人は面白いかどうか分からなくなってきているだけ、ということもよくあります。
とりあえず面白いかどうかは読む人の判断に任せることにして、作業と割り切って完成させましょう。もし本当に駄作だったとしても、次作で挽回すればいいんです。描いた時間はトレーニングになっているので、少なくともその分の利益はあります。まずは1作描いてみましょう。
飽きた
作ることに意味が見いだせなくなったわけでもなく、単純に飽きてしまったパターンです。
漫画は完成するまで時間がかかるということもあり、描きたくないものや苦手なものも描かなくてはいけないので、娯楽としては正直面白くない部分も多いです。完成させたいならそういう部分も割り切っていかなければなりませんが、楽しい部分だけを描いて漫画を完成させることもできるにはできます。
楽しい部分だけを描いて漫画を完成させたいなら、そのようなネームを最初に作ればいいだけのことです。例えばかわいい女の子の斜め顔だけが描きたいのならば、それだけしか出てこないネームを作ればいいのです。
1ページの顔だけ漫画でも漫画としてはありです。1ページすら描き切れないなら1コマでもいいです。漫画を描く作業は基本的に大変で時間がかかるので飽き性の人には向いていませんが、クオリティを捨ててとにかくハードルを下げれば飽き性でも漫画を完成させることができます。自分はここまでならやる気を保てるという範囲を把握して、その範囲内で完成させられる漫画を描くようにするとよいでしょう。
もし「1ページ描き終わる前に飽きちゃうし、一度飽きたら次にやる気が出るのは半年後ぐらいだけど、50ページの神クオリティの漫画を描き切りたい!」というのなら、実際にそのペースでやっていけばいいと思います。半年で1ページなら50ページを描き切るのに25年かかりますが、どうしても頑張れないならそれでもいいと思います。ただ、他人に褒めて欲しいならもう少し頑張ることをおすすめします。1作に25年もかけていたら絵も展開も古くなるし、プロは到底無理だし、作品数も少なくなるので、あまり褒めてもらえないと思います。というかそんなに時間をかけるくらいならお金を積んで上手い人に描いてもらうことをおすすめします。どうしても自分の力で1ヶ月で描き切りたい!という場合は、飽きている場合ではないので血の涙を流しながら頑張ってください。
まとめ
マンガを完成させるのは非常に大変な作業です。誰にでもできるようなことではありません。
だからこそ、完成させたときの達成感や感動は大きいものです。
時間がかかってもいいから、クオリティが低くてもいいから、まずは1作完成させましょう!
たった1作であっても完成させたという経験は、確実にあなたの漫画力アップにつながります!
全18回に渡ってお送りしてきた「初心者マンガ講座」は今回でおしまいです。
この講座がメディバンペイントを使ってマンガを描いている方、これから描きたいと思っている方へのヒントになっていれば幸いです。
それでは、メディバンペイントでどんどんマンガを描いてみてくださいね!
これまでの講座はこちら
初心者マンガ講座01 マンガ作りの手順を知ろう
初心者マンガ講座02 マンガの企画を考えよう「その1」
初心者マンガ講座03 マンガの企画を考えよう「その2」
初心者マンガ講座04 MediBang Paintでマンガを描く準備をしよう
初心者マンガ講座05 ネームを作ろう
初心者マンガ講座06 コマ割り・画面作りについて考えよう
初心者マンガ講座07 原稿作りの注意点を確認しよう
初心者マンガ講座08 枠線・フキダシを描こう
初心者マンガ講座09 人物・自然物を描いてみよう
初心者マンガ講座10 ブラシや素材を活用しよう
初心者マンガ講座11 簡単な人工物を描いてみよう(パースなし)
初心者マンガ講座12 パースを使って部屋の中を描いてみよう
初心者マンガ講座13 集中線・効果線や描き文字を描こう
初心者マンガ講座14 ベタを塗ろう
初心者マンガ講座15 トーンを貼ろう
初心者マンガ講座16 描いたマンガを投稿してみよう
初心者マンガ講座17 クラウドの便利な機能を使ってみよう
「ГФ」
ART street
作品集はこちら: https://medibang.com/u/seledkapodshboi/
私の描いたマンガはここから読めます→ https://medibang.com/book/0c2101280307258390018866367/
別名義で作画担当をしている作品です→https://medibang.com/comics/official/dobs340000005872400000000000a/
twitter: https://twitter.com/seledkapodshboi
\ 使い方記事の要望を受け付けています /